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さかなつりにいってたいへんなことになったひのはなし [思い出と、家族の肖像]

   

 

 これもまた、ワタシが、小さい頃のこと。


母が内職をしていると、小さな私は、母の邪魔になるため、
時々、釣りに行く父に連れられ、海へ付いて行った。

オンボロの自転車の荷台に乗せられ、海までの道のりを
駆け下りるのは、爽快で、楽しかったが、
楽しいのは、所詮、その程度のところで、あとは、
堤防のうえで、ケンケンをしたり、しゃがんで海をみたり、
獲物をまって、タバコをふかしている父に、面白い話を
せがんだりするくらいで、30分もしないうちに、退屈を
モヨオシ、あとは、帰ることしか、考えなくなり、
坂道を登っていくとき、いかに、父をそそのかして、
荷台にのせてもらって、楽をしようかとか、そういう
叶いもしない策を練ったりしていた。

そんな、ある日、私は、来る道の途中の釣具やで、ちちが
買い求めた「魚のえさ」が気になった。
それは、「ごかい」という、みみずのほそいよな やつで、
互いに、からみあい、うねって、固まっていた。
砂利なども、ひっついていて、じつに、不気味なもの
だったが、小さな私は、それをちっとも、きもちが悪いとは
思っていなかった。
そこで、私は、父にこのように尋ねた。
「これ、魚が食べるん?」
父は、こう、答えた
「ああ、そうやろなぁ」
さらに、私は、このような質問を父に投げかける。
「美味しいん?」
父は、適当に答える。
「ああ~美味しいんやろなぁ~~~」

不可思議な興味がじわっと、ワタシをつつみ、
私は、何かに誘われるように、ごかい を 自分の口に放り込んでい

た。

「うええええええええ」


なまぐささと、
砂利の歯ざわりを
なんとなく、今でも、覚えている。


その、同じ日、
その事件をおこしたあとのこと。


父は、いくつかの、魚を釣り上げ、
そこそこいったな と、おもっていると、
目の前を みたよな、アイナメや、黒だいが、
プカプカと 浮いているのが見え、
なにやら、横手から、ザブーン、ザブーンという
豪快な水音がするのを聞いた。

見ると、
末の娘が、(つまり、ワシ)
釣った魚の最後の一匹を、つかみ、海へと放り込まんと
しているところだった。

「ワワワワワワワワー」
父の慌てる声に驚いて、
私は手をとめたが、
すぐに、「あきらめ、ヤケになった父」に
「まーえーわ、ほりこんだれ」といわれて、
素直に、最後まで、

さかなを 海へと かえしてあげたのだった。
その前に、天に還っていたさかなたちであったが。

 

釣りに行こう

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  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 1990/03/21
  • メディア: CD


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